解答速報&学習アドバイス・2023年度岡山大学英語

★2024年度の解答速報&学習アドバイスは コチラ からご確認ください。

地元岡山大学の入試問題を、受験したOSD生から問題冊子をお借りして、医学部医学科に通うOSDインストラクターと一緒に解いてみました。最初の感想は「良問揃い!」ということ。特に英作文は2題とも実力の差がしっかり出る問題だなという印象です。岡大合格のために英作文を本格的に対策してきた受験生の皆さんに吉報が届くことを祈ります。発信型言語習得を掲げるOSDでは、英作文問題を中心に解答速報&学習アドバイスを展開していきます。

全体講評

出題フレームも問題形式も変更点がなく、良問揃いのセットでした。問3・問4の英作文で取り組みづらいと感じた受験生もいるでしょうが、2022年度に比べて読解問題が解きやすくなったと思われることから、全体の難易度は「昨年並み」と判断しました。例年以上に作文力が合格の決め手となるでしょう。

  • 解答形式 記述8:客観2
  • 作読比率 作文5:読解5(大問数4)
  • 試験時間 120分
  • 分量   変化なし
  • 難易   昨年並みと思われる(読解は標準~やや易、作文は標準~やや難レベル)
  • 注目点  読解総合(問1・問2)では、2021年度から2年連続出題されていた【サークル・オール問題】(*1)が姿を消して、客観問題は解きやすくなりました。記述問題では、「本文に即して日本語で説明」という岡大定番の指示でした。

*1  【サークル・オール問題】とは… Circle all the true statements. (2021年度)、Circle ALL of the correct answers. (2022年度) という指示の問題をOSDでは【サークル・オール問題】と呼称することにします。当時、サークル・オール問題の出現自体が受験生を動揺させましたが、さらに衝撃だったのは正解の個数です。「オール」と指示しながら正解の選択肢が1つという問題がありました! 正解3個の問題もあり、その採点基準が気になるところです。ちなみに、2021年度のサークル・オール問題は2問(うち1つは選択肢5正解1、もう1つは選択肢5正解3)、2022年度は1問(選択肢5正解3)でした。

解答速報

問3 和文英訳

出題は「(地図を広げて)この仕事は愛が返ってくる 香取慎吾」『朝日新聞DIGITAL』2022年6月5日より。岡山大学としては標準的なレベルですが、ほぼ同じレベルの他の国公立大学ではやや難レベルになるでしょう。

2023年度の問題は、和文英訳の力を測るのに特に優れた問題だと感じました。難しい語彙は必要ありませんが、自然な英語にするのにちょっと骨が折れる問題ですね。ちなみに、下線部①「年の離れた同僚」は、原文では「年の離れた部下」でした。この改変は難易度を上げる形に。下線部②「何か言いたくなってしまう」は、原文では「つい何か言いたくなってしまう」と『つい』の2文字が入っています。

下線部①

I think that in an institution, such as a company, it must be difficult to keep the best distance with colleagues who are much younger or much older than themselves.
/ I understand that in a group of people, such as a corporation, it must be troublesome deciding[thinking about] the distance (they should keep) with co-workers who are much younger or much older than themselves.

[…]は直前の語(句)と言い換え可能、(…)は省略可能を意味します。
OSDの作例等、無断転載はお控えください。

・「年の離れた同僚との距離の取り方」の処理が難しい問題でした。「年の離れた同僚」は原文のままならばone’s seniors(先輩)と一言で済みますが、作例では丁寧に訳しています。

・「悩むのはわかる」の部分はit must be difficult[troublesome] と助動詞must「~であるに違いない」で表現することができます。医学部医学科に通うインストラクターは「わかる気がします」を「悩むのは当然だと思う」と言い換えてI think it is natural that people worry about how they should get along with…と表現していました。

下線部②

When you have more experience (than young dancers), you feel like giving advice (to them/people), but it is also necessary for people to think (about things seriously) on their own.
/ When you are more experienced, you want to give some advice, but they would probably need some time to consider some better ways to improve themselves without help.

・「ひとりでもがく時間」の訳出で差が出るでしょう。OSDインストラクターは、I think it is necessary that they learn through trial and error by themselves. と工夫しています。「試行錯誤を通して学ぶ」等の定型表現を、日頃から読んできた文章を通じて身につけていけるようにしたいですね。

下線部③

When people are praised, they clearly get a good look and look like they are self-confident.
/ When I praise them[young dancers], the expression on their faces obviously changes into a good one and into a face full of confidence.

・「表情がよくなって自身に満ちあふれた顔になる」の部分をOSDインストラクターはlook better and more confidentと、andで形容詞を2つ並列させて表現しています。

・1つ目の作例では「表情がよくなる」ことと「自信に満ち溢れた顔になる」ことを、別々に表現しています。2つ目では、「顔になる」をchange into…で処理するなど、日本語に忠実に訳す姿勢を貫いています。

問4 自由英作文

2023年度は、民法・刑法などの法律、あるいは家庭内の規則、社会のルールについて、改訂(または新設)したいものについて意見をまとめる問題でした。その法律(規則)の内容説明と、改訂(新設)したい理由をあわせて、10行程度の英語でまとめます。分量は例年通りです。語数をカウントすることを受験生に求めていないので、内容や表現の見直しに集中できるのが岡大英語のよいところです。問題レベルについて、OSDでは「やや難レベル」と判断しました。社会的な問題への関心が必要ないと厳しいテーマですが、民法・刑法だけでなくcommon rule (family rule, social rule, etc.) について書いてもよいとする受験生への配慮があるので、「標準レベル」と判断する予備校が多いかもしれません。

書き始める前の準備が大切です。英語外部検定試験のライティング問題のように、型にはめる練習ばかりしている受験生にとっては書きづらい問題だったかもしれません。これまで練習を積んできたテーマ・解答例などを思い出して本問に合うように工夫することで、効率よく書き上げることができ、見直しにたっぷりと時間をかけられます。

問題冊子を貸してくれたOSD生は授業で2度扱った「電動自転車」に関して本番で書いたようです。構想メモを見る限り内容点はおそらく満点でしょう。あとは直前期に毎日添削指導をしてきた「自分のミスの癖」をしっかり点検できていれば、ほぼ満点の答案を仕上げてくれているはずです。

OSDの作例は「選択的夫婦別姓制度」について。ここ数年出題が増えていた「男性への育児休暇取得推進」などのSDGs関連の新しい入試問題で練習をしっかり積んでいれば、こうした社会的なテーマでも時間内にしっかりした作文を書きあげることができると思います(改訂がほとんどされていない問題集やテキストを使うのは英作文においては厳禁ですよ)。

I would like to change the existing law in which married couples must share the same family name. Now, the majority of women change their family names or are forced to change them. In an age when men and women are supposed to be treated equally, this law should be changed. Marriage and divorce are personal matters, but they are known to colleagues when a person’s surname changes. Some feel embarrassed and it might disturb work. Also, changing surnames of all official documents, such as passports or bank accounts and credit cards, is inconvenient and a waste of time. Using the same surname through the life will reduce the stress of the bride as well as the paperwork of the administration. I hope that changing the existing law about surnames will make more young couples decide to get married and have babies. This might help solve the problem of a declining birthrate and an aging population. (156)

書き始めはアルファベット5文字分スペースをとります。

学習アドバイス

岡大英語は120分4題(読解2:作文2)というフレームがしばらく続いています。岡大を目指す受験生は早期からの英作文対策が必須と言えるでしょう。和文英訳(問3)は易しそうに見えますが、主語の選定や細部への配慮など学ぶべきポイントが多い良問です。新高校3年生はこの春休みにぜひ取り組んで、1年後に求められるレベルを知っておきましょう。自由英作文(問4)の対策として、まずは基本的な意見論述タイプの作文に慣れましょう。夏休み前には何問も解いておきたいですね。

一口に「自由英作文」といってもバリエーション豊かですから、夏休み以降はあらゆる形式の問題に挑んでほしいと思います。ここ数年出題する大学がどんどん増えているグラフ描写問題(*2)、一橋大や早稲田大法学部などで出題されるイラスト写真描写問題のほか、メール作成や会話文補充、ことわざや日本の文化・風習を説明する問題など、やるべきことはたくさんあります。「作文読解の比率が1:1」の岡山大学を目指すなら、時間をかけて本格的な対策をすべきでしょう。なお、自由英作文は自主点検が難しい問題です。ふだんから信頼のおける先生の指導を受けることが重要です。表現上の誤りだけでなく、内容・構成面でも厳しく指導してくれる先生をなるべく早く見つけてください。英作文は授業を受けるだけでは力が付きません。

*2 グラフ描写問題 グラフの伝統・広島大だけでなく、名古屋大、滋賀県立大、佐賀大、琉球大、さらに近年では九州大、長崎大など出題する大学が増えてきています。なお、2023年度の九州大学では2つのグラフが提示され、両者の違いと考察を英語で表現する必要がありました。

続いて読解について。2023年度の読解(問1・問2)は素直で取り組みやすい問題でした。しかし、英文を語順のままどんどん読み進める力(速読力)がないと、記述問題への対応時間が確保できなくなります。また、本年度は姿を消しましたが、全体にわたって正確な読み(精読力)が求められる【サークル・オール問題】(5つの選択肢から正しいものをすべてマルで囲め問題)が復活する可能性もあります。速読と精読のスイッチの切り替えは経験が必要です。

2022年度の「ゴーストネット」の問題のように、時事問題を扱った素材が出題されると語彙レベルがぐんと上がるのも岡大英語の特徴です。新高3生・新高2生は単語学習を疎かにしてはいけません。「瞬発力を鍛える!」を合言葉に、まずは頻度の高い単語に的を絞って、(共通テストのリスニング対策も意識して)発音と綴りの練習、そして重要な意味(ゆくゆくは2つ目、3つ目の意味も)がすらすらと言えるように鍛え続けましょう。英作文のことを念頭に「語法」も忘れずにしましょう。「prevent サマタゲル prevent サマタゲル…」と呪文を唱えるのではなく、「prevent war from ever happening again 戦争がもう二度と起こさない」のように、語法を意識して役立つフレーズごとインプットするとよいでしょう。

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