解答速報&学習アドバイス・2024年度岡山大学英語

OSD岡山進学でざいんによる、2024年度岡山大学前期日程2次試験英語の解答速報です。受験生が独学で鍛えていくのが難しい英作文パートを中心に、作例と学習アドバイスを紹介いたします。

2024年度の岡山大学は、医学部医学科受験生を中心に全国的に注目されています。ご存じの通り、CEFR[セファール]のC1レベル以上で共通テストの外国語及び2次試験の英語の両方がみなし満点になるからです。あわせて500点分が満点になるというインパクトはもちろん、直前期に理数科目の対策に注力できる点も大きな強みとなります。受験生とその保護者からのレポートによると、みなし満点と思われる受験生のために50人規模の教室が割り当てられていた模様です。OSDでは「特に医学部医学科において、彼らとの得点差が大きく開かないように配慮がなされ、英語は全体的に易化する」と予想していました。果たして、実際の問題の難易度はどうだったのでしょうか。それでは、出題フレームから確認しましょう。

  • 解答形式 記述7:客観3〔2023年度は8:2と分析〕
  • 作読比率 作文5:読解5(大問数4)〔2023年度と変化なし〕
  • 試験時間 120分〔2023年度と変化なし〕
  • 分量   昨年並みと思われる〔2023年度と変化なし(ただし問3は減少)〕
  • 難易   やや易~昨年並みと思われる〔作文はやや易レベル(2023年度は標準~やや難レベル)〕
  • 注目点  自由英作文(問4)の指示の多さ(丁寧さの裏返しでもある)がやや気になるところです。読解総合(問1・問2)では、2021・22年度と2年連続出題されていた【サークル・オール問題】(*1)は2024年度でも復活はありませんでした。選択肢4つでCircle the best answer. というオーソドックスな形式で、ここは満点を確実に取りたいところです。記述問題では要求される解答の分量は少な目でした。余計なことを書かずに要求された部分を的確に答えてほしいという出題者のメッセージが感じられます。
  • *1【サークル・オール問題】とは… Circle all the true statements. (2021年度)、Circle ALL of the correct answers. (2022年度) という指示の問題をOSDでは【サークル・オール問題】と呼称しています。当時、サークル・オール問題の出現自体が受験生を動揺させましたが、さらに衝撃だったのは正解の個数です。「オール」と指示しながら正解の選択肢が1つという問題がありました! 正解3個の問題もあり、その採点基準が気になるところです。ちなみに、2021年度のサークル・オール問題は2問(うち1つは選択肢5正解1、もう1つは選択肢5正解3)、2022年度は1問(選択肢5正解3)でした。

解答速報

問3 和文英訳

出題は「(天声人語)坂本龍一さん逝く」『朝日新聞DIGITAL』2023年4月4日より。2年連続『朝日新聞DIGITAL』から、しかも文化・芸能関係の記事(昨年度は香取慎吾さんのインタビュー)からの抜粋でした。下線部がぐっと短くなったこと、訳出に苦労する箇所が一つもなかったことから、問3は易化と判断しました。

[…]は直前の語(句)と言い換え可能、(…)は省略可能を意味します。
OSDの作例等、無断転載はお控えください。

下線部①

I study because I want to avoid copying the works of the past and make something of my own.
/ I study hard because I want to create something original, not wanting to produce works similar to any from the past.

・「過去の真似(まね)をしないため」は、単に not to copy the past のように訳すのではなく、そのメッセージを考えて訳出したいところです。訳例1は「過去の作品をコピーしたくない」と考えて〈avoid Ving…〉を使いました。avoid doing something は、choose not to do it / put yourself in a situation where you do not have to do it の意味で、ここで用いるのにピッタリです。

・訳例2では「自分の独自なものをつくりたい」という理由を先に表現し、「これまでの作品と似た作品を生み出したくないからだ」とメッセージを汲み取って、…, not wanting to produce… と分詞構文で処理しています。similar to any (works) from the past は後ろから works を修飾しています。なお、「作品」の work は可算名詞です。

下線部②

Looking back on all his works, from very popular songs to screen music, we cannot help being surprised at the unlimited world of art he made.

/ When we look back at his works, we are only surprised by how vast his world is [how wide his music was], from hit songs to film music.

・「驚かずにはいられない」は、定番の〈cannot help Ving〉で表現したいところ。しかし帰国生担当講師は、わざわざこの表現を使わずに We are surprised が一番最初に思い浮かんだとのこと。採点者に訳し漏れだと判断されぬように、only を入れた作例をご紹介しています。

・「作品をふり返ると」は〈look back on…〉ですが、一つ一つの作品を思い出している様子を考えると、前置詞は at がよいかもしれません。

・「ヒット曲」は hit songs で問題ありませんが、「これは和製英語かもしれない」と考え、作例1つ目のように (very) popular songs と訳せれば OK です。貪欲に新しい英語表現を吸収していくことと、本番での対応力を鍛えることのバランスが大切ですね。

・music は不可算名詞である点に注意しましょう。

・「その世界の広さ」は作例1のように unlimited などを使った名詞表現よりも、〈wh- S’V’…〉を使って表現する習慣を身につけてほしいところ。和文英訳の応用力が広がります。「広さ」は広がりを感じる vast(extremely large)でしょうか。enormous, immense, huge, tremendous, …などの類義語ネットワークを構築する際に、どういう語と結びつきが強いかを考えて良質なフレーズ・例文を丸ごとインプットしたり、「norm=規範・規格」より「規格外の、並の量や程度をはるかに越えた」などと語源的アプローチを考えてみたり、単語ごとの違いを意識しましょう。

下線部③

Good music remains long after the death of its composer.
/ An excellent[outstanding] piece of music lives on long after its composer passed away.

・「優れた音楽」は深く考えずに good music と訳せば十分でしょう。訳例2では「卓越した音楽作品」と考えて訳しています。下線部①で works を用いているので、ここでは a piece of music としました。自由英作文と同じように、和文英訳問題に取り組む際も、使用する語彙や構文に変化をつけるように心がけたいですね。

・「作者の死後も長く」は long after…で表現します。優れた音楽の作者なので、its をお忘れなく。

問4 自由英作文

「改訂(または新設)したいルールについて」という2023年度のお題に対し、2024年度は「大好きな先生について」という身近なテーマが出題されました。分量は例年通り10行程度の英語です。字数カウントの不要な岡山大学自由英作文は、問題文の指示が丁寧で、受験生が安心して取り組める良問です。今年度は「その先生はどう生徒に接していたか」「どんな活動があなたは楽しかったか」と具体例を挙げて、受験生が何を書いたらいいのかわからない事態がないようにという配慮が感じられます。

問題レベルは標準レベル(昨年並み~やや易化)でしょう。出題の多い社会問題系統ではなかったために書きづらさを感じた受験生もいるかもしれません。問題冊子を貸してくれたOSD生は、冬学期第7講〔2月3週目〕の授業で扱った「あなたにとっての快適な部屋とは?」というお題が役に立ったとコメントしてくれました。

直前期に取り組むように指示をした問題セットに「影響を受けた先生は?」というお題があったのですが、これを授業で取り組まなかったことを悔やんでおります。

どんなお題でも、書き始める前の準備が大切です。英語外部検定試験のライティング問題のように、型にはめる練習ばかりしている受験生にとっては書きづらい問題だったかもしれません。これまで練習を積んできたテーマ・解答例などを思い出して本問に合うように工夫することで、効率よく書き上げることができ、見直しにたっぷりと時間をかけられます。

問題文の第4文に、「テレビのリポーターからあなたの大好きな先生についてのインタビューを受けている状況を想定して、そのリポーターに答える形で」という条件があります。インタビュー回答を文字起こししたものなら、全体的にくだけた表現になるはずですが、ここは大学入試の舞台です。そこまで高度なことを要求しているとは考えにくいので、いつも通りの(会話体ではない)英作文を書けばよいでしょう。

問題文の最終文で、…, giving reasons why your favorite teacher was so important to you. と指示が追加されています(下線は筆者が施しました)。正直「う~ん」と悩みました。というのも、favorite な先生は必ずしも so important to you ではないからです。筆者自身の高校時代のお気に入りの先生は、俳優の藤岡弘、さんに背格好も声も似ているO先生でした。国語の先生で漢文の授業になると板書が急に隷書体になったり、渋い声にメロメロになる生徒がいたりと、とにかく魅力的で my favorite な先生でした。しかし、その先生が私に(私の人生に)大きな影響を及ぼすことはありませんでした。岡山大学からの最後の指示に応えるために、最後の1文だけ嘘をつきました。私は大学で生物学の勉強は全くしていません。言語学の授業ばかり取っていましたので。

Let me introduce Mr. Ohsako, a biology teacher of[at] my high school. He was loved by his students for his exciting lessons. We didn’t use textbooks, and instead we did long-term projects and were given a lot of home assignments. He gave us original handouts, which helped us carry out experiments and think by ourselves about what is hidden in the phenomenon we observed. What’s more surprising, he took us outside the school. We went birdwatching and observed plants in a national park. And in final exams (of each semester) he gave us listening tests. He would make us tell one bird song from another. His classes, including the exams, inspired us very much. In my case, I decided to study biology at university. (121~124 words)

*書き出しはアルファベット5文字分あけます。
*ご覧いただいているスクリーンの大きさによって行数が異なりますが、10行程度という条件で作例を書いております。
*事前の計画が不十分な場合、英語が得意な受験生はつい書きすぎてしまいます。今回提示している作例は1行10語程度の文字の大きさの生徒にとっては「やや書きすぎ」、1行12語程度の文字でふだんから練習している生徒にとっては「ちょうどいい」長さになっています。

学習アドバイス

すでに解答速報のパートで学習アドバイスをいくつかしておりますが、ここで改めて整理します。

・岡大英語は120分4題(読解2:作文2)というフレームがしばらく続いています。和文英訳の分量が減ってきているとはいえ、岡大を目指す受験生は早期からの英作文対策が必須と言えるでしょう。

・新高校3年生はこの春休みから、過去問にぜひ取り組んでください。1年後に求められるレベルを知っておきましょう【OSDでは2024年3月20日(水祝)に特別セミナーを実施しますので、興味のある新高2生以上の方はコチラからお問合せください!】。自由英作文(問4)の対策としては、まずは基本的な意見論述タイプの作文に慣れましょう。

・一口に「自由英作文」といってもバリエーション豊かです。遅くとも夏休み以降は、あらゆる形式の問題に挑んでほしいと思います。近年出題が増えたグラフ描写問題(*2)、一橋大や早稲田大法学部などで出題されるイラスト写真描写問題など、やるべきことはたくさんあります。「作文読解の比率が1:1」の岡山大学を目指すなら、時間をかけて本格的な対策をすべきでしょう。

・中学生~新高2生は、学校で取り組む英作文課題をきっちり復習してみてください。復習時に書き直した英作文もぜひ先生に添削してもらいましょう。「作文は添削指導を受ける」ことが一番成績アップにつながります。解答例を眺めておしまいという人は、OSDに来てください。とことん添削に付き合います。表現上の誤りだけでなく、内容・構成面でも厳しく指導します。生徒の皆さんの癖を把握したうえで添削指導を施します。

・読解については、英作文以上に早期の対策が必要です。詳しくは、2024年3月25日(月)・26日(火)のOSD春の特別セミナーで、岡山の高校生にお伝えいたします。英語が伸び悩んでいる方、英語をさらに武器にしたい方はぜひお越しください。

*2 グラフ描写問題 グラフの伝統・広島大だけでなく、名古屋大、滋賀県立大、佐賀大、琉球大、さらに近年では九州大、長崎大、さらには瀬戸大橋を渡って香川大など、出題する大学が増えています。なお、2024年度の九州大学ではグラフ描写問題が消え、意見論述型が2題も出されています。

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